家庭教育支援協会
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公開講座を終えて頭に浮かんだことは……

 一月の終りから二月のはじめにかけて八洲学園大の公開講座を担当したときのことです。会場教室の教壇に座り、目の前にあるカメラを見ていて、ふと、思い出したことがありました。
 もう数十年も前になるでしょうか。先日、亡くなられた落語家の桂米朝さんの高座での話です。「観客のいないスタジオで、カメラの前にちょこんと座って『毎度ばかばかしい話を・・・』と話すのはかないまへんなあ。おもろい話でも誰も笑ろうてくれまへん」という枕話で笑いを誘っていたことです。
 話し手が登場人物の持つ“おかしさ”を強調しながら話すことを、聞き手が共感し笑いを共有する。笑いが共有されることでそれが増幅されてゆく。つまり、“おもろい話”は聞き手と話し手が相互に「暗黙の応答」をしながら“ホンマにおもろいはなし”になるのですね。
公開講座初日、人前で話をすることを職業とする私も、はじめは同じように、“かないまへんなあ”という気持ちでした。幸いにも、来場者のおかげで気持ちを切り替えることができました。
 人間の“脳”は、人とモノとでは、その使われる領域と働きは異なると言います。人間を扱う時にだけ使われる領域が「社会脳」です。一般的には、共感性やコミュニケーションなど、『社会性』に関する機能の領域と言われ、「人間性を育てる脳領域」と呼ばれることもあります。落語家や私たちのように、カメラという“モノ”にではなく、大勢の人に話しかける仕事は、聞き手が話に共感し、“おもしろさ”を共有する、つまり、聞き手の社会脳を刺激することで成り立っている。そこに話し手の醍醐味があると言えるのです。
 「社会脳」は社会の中で生きる人間特有の領域で、誰しもが生まれつき備わっているものです。しかし、その機能は自然に発達するものではなく、生まれてからの学習を重ねることによってのみ得られるものなのです。育てる人の体温や眼差しを共有し、笑いかけると笑い返す、反応し合う楽しさを学習する。これが「社会脳」を発達させる原点と言えるでしょう。成長する中で、人と一緒に泣いたり笑ったり感動したり、注意の共有の体験を繰り返した経験が共感性や社会性を育てて行くものとなります。
 近年、ネット、スマホ、ゲームなどの長時間利用が若者や子ども達の「社会脳」の発達を阻害するとの指摘がなされている。将来、そんな彼らが聞き手になった時、彼らの「社会脳」に働きかける寄席の落語家や教室の講師たちは、どこに充実感や醍醐味を見出すのであろうか。
 話芸や話術の危機到来と言うことになるのかもしれない…。
 
2015年4月20日

家庭教育師・家庭教育アドバイザー

A.C.S.学院代表

石井 登